第6話:「リンクする心、重なる唇」
それから奏は、ゲームにもログインしなくなった。
部屋の片隅、暗がりの中でぼんやりと日々をやり過ごす。
一方の悠真は、毎晩同じ時間にゲームにログインしていた。
ログイン画面に奏の名前が現れるのを、ただ祈るような気持ちで待っていた。
――だけど、待っても待っても、その名前は現れなかった。
(……もう、俺なんかに会いたくないよな)
心が折れそうになりながらも、それでも毎晩、ログインすることだけはやめなかった。
そして、静かな夜。2週間ぶりに、ログイン音が響いた。
『奏がログインしました』
その通知に、悠真の手が震えた。すぐにメッセージが届く。
「……気持ちの整理がついた。話がしたい。今夜、公園で会えない?」
――夜の公園。街灯の下、ベンチに並んで座るふたり。
しばらく沈黙が続いた後、奏がそっと口を開いた。
「……なんで、黙ってたの?」
「怖かった。バレたら、嫌われると思ってた。
でも、それ以上に……本当の俺で、向き合いたくなった」
奏は少し笑った。
「最初はね、YUMAに惹かれた。でも……そのうち、君がどこかで、
俺のことをちゃんと見てくれてる気がしてた。本当はずっと気づいてたのかも。
君が、悠真なんじゃないかって」
悠真が、はっと顔を上げた。
「……嘘をつかれたことは、正直つらかった。
誰かを信じるのって、思ってた以上に怖いんだなって思った」
「でも、信じたかった。“あのときの同期”としてじゃなくて、“今の君”を」
『奏…』
その言葉と同時に、奏の手がそっと伸びる。
悠真の頬に触れたその瞬間――奏は、そっと唇を重ねた。
あたたかくて、やさしいキスだった。
胸の奥で、ずっと燻っていた痛みがふっとほどけていく。
「……ありがとう、探してくれて」
「……俺、もう君を手放したくない」
ふたりの手が、しっかりと結ばれていた。
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